1.はじめに


 事業や生活費、学費など資金が必要な時、現金化できる持家は頼もしいものです。
 けれど自宅を手放すのは、様々な手間やストレスがあるものです。
 スピーディーに売却代金を受け取りながら、自宅に引き続き住み続けたい。そんな要望に応える不動産売却サービスが、「ハウスリースバック」です。

2.住み続けられる不動産売却サービス

 持家は大きな財産です。「いざとなれば自宅を売れば良い」と考える人は多いでしょう。ですが、実際に今住んでいる自宅を売却するのは、かなりハードルの高い事です。
 最初のハードルは時間がかかる事です。売買は、あなたが売りたくても買い手がつかなければ成立しません。不動産は株式などと比べて換金しにくい、流動性はそこまで高いとは言えません。不動産売却に必要なトータルの期間は首都圏ですら、平均8ヶ月程度という調査結果があります。これはあくまで平均ですので、物件や条件によってはもっと長引く場合も考えられるのです。
 また、自宅がなくなるので新たに住む場所が必要です。他に住宅を所有しているならまだ良いですが、それでも引っ越しの手間や費用はかかります。所有しているのが自宅だけなら、新たな家やマンションを見つける必要があります。転居した後も、新しい環境に馴染むのは、ストレスの大きい事です。
 そんなハードルを取り去ってくれるのが、ハウスリースバックです。ハウスリースバックは、売却した後も賃貸物件として同じ家に住み続けたいという、顧客の声から生まれた不動産売却サービスです。
 尚、ハウスリースバックは登録商標で、類似のサービスもありますが、今回はハウスリースバックについて解説します。

3.ハウスリースバックのメリット

 ハウスリースバックのメリットは様々です。
 一番大きいメリットは、今までの家に住める事です。同じ場所に住み続けられるので、通勤や通学への影響もなく、新しい住環境に馴染むためのストレスもありません。
 ただ、持ち家から賃貸に切り替わる事に、ご近所への気まずさを感じるかも知れませんが、心配は要りません。ハウスリースバックでは、売却直後にあなたへの賃貸契約が始まるため、事業者は物件売却や賃貸募集のために公表をする必要がありません。あなた自身も引越する訳ではないため、ご近所に売却の情報が伝わる事はありません。
 次に金銭面のメリットです。ハウスリースバックは、相談から現金化まで、標準で40日、最短で5日とスピーディーな対応が可能です。地域や評価額の制限もありません。買い取り代金は、基本的に一括で受け取る事が可能で、売却代金を賃料に充当する事もできます。賃貸の扱いになるため、勿論固定資産税はかかりません。引越に関わる費用なども不要です。そして勤務先にもよりますが、賃貸になった事で家賃補助が受けられる場合もあるのです。
 住宅ローン支払中の家も対象となるため、転職などで収入が代わり、直近のローン支払いが難しくなって来た時の債務整理にも利用できます。一戸建てに限らず、区分マンションにも対応しています。
 ハウスリースバックは、一見、あなたにばかり都合が良さそうですが、事業者にとってもメリットの大きいwin-winのシステムです。
 事業者が不動産を買い取る理由は、自社利用でなければ、売却益や家賃収入目当てでしょう。ハウスリースバックはあなたの賃貸利用前提のサービスです。事業者は借り手を探す手間や費用を使わず、買い取ったら即座に家賃収入が得られるのです。その後、あなたの賃貸契約が終わったとしても、それまでの期間があれば、買い手や次の借り手を探す事が出来るでしょう。

4.利用後の生活をシミュレートしましょう

 ハウスリースバックを利用して自宅を売却し、賃貸による利用が始まった後はどうなるのでしょうか。
 自宅に住み続けるのですから、生活は変わりません。今まで通りの家やマンション、ご近所づきあい、通勤通学から、買い物に行く店、飼い犬の散歩コースまで同じように暮らす事が出来るのです。
 ハウスリースバックによる賃貸契約は、普通賃貸借契約となるため、更新を続ける限り住み続ける事が可能です。
 売却資金に関して、用途の制限は何もありませんので、事業拡大や生活費、教育費、老後費用など様々に利用出来ます。
 一時的な資金確保の為にハウスリースバックを利用した場合、買い戻す事もできます。勿論再購入は義務ではありませんし、それが賃貸契約の条件になっている訳でもありません。
 再購入価格は契約時に予め決められており変動はしません。再購入に関わる期限は設けられていないため、あなたの都合に合わせた計画的な再購入が可能です。
 更に、再購入した自宅をまた売却したい時にも「売却時支援制度」が用意されており、支援を受けられます。
 その他利用者向けコールサービスや定期訪問サービスなども用意されています。
 勿論、デメリットについても忘れるべきではありません。目先の資金の為に、あまり考えずに契約してしまい「もっと高く売れたんじゃ?」「思ったより家賃が高い」と後悔する状況はあり得ます。契約時にその後の生活、特に「売却代金を使い切った後」までよくシミュレートする事が重要です。

5.まとめ

 自宅には様々な思いが詰まっています。かけがえのない家族との思い出の舞台でもあります。これを手放す事は、誰でも心苦しいものです。
 そんな思いを共有しつつ、売却やその後の支援にも気を配ったハウスリースバックは、不動産売却時の選択肢の1つとして考えるべきものでしょう。