引越しを行うにあたってマイホームや分譲マンションを売る場合には、所得を得ることになるので、税金のことを考えなければなりません。問題はどれだけ所得税等がかかってくるかですが、これは売る物件の所有期間などの状況により異なります。

1:一般的には所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%かかる


居住用の自己所有物件を手放す場合には、一般的には5年超は住んでいた(所有していた)ケースが多いです。

取得日から売却日の属する年の1月1日までが5年超であれば、不動産売却の所得に対し、所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の計20.315%かかってきます。

所得税・復興特別所得税・住民税と3種類の税金がかかりますが、いずれも所得にかかる税金です。違いは所得税が国に納める税、復興特別所得税は国に納めるもののうち東日本大震災の復興財源となる税、住民税はお住まいの地方自治体に納める税という点です。

また20.315%の税金は、例えば物件の売却代金が9,000万円になるとして、9,000万円×20.315%と計算するわけではありません。

物件の取得費が2,500万円、売るのにかかった諸費用(譲渡費用)が500万円とすれば、かかる税金は(9,000万円-2,500万円-500万円)×20.315%=1,218万9,000円と計算されます。要は所得計算にあたり、売却代金から取得費と譲渡費用は差し引けます。

取得費は物件を買ったときの金額から建物の価値減少額を差し引いたもの、譲渡費用は売買契約書に貼る印紙代や仲介業者へ支払う手数料などが該当します。

取得費が不明な場合は、売却代金の5%とすることができますので、取得費と譲渡費用が不明であっても売却代金に税率をかけて計算する必要は無く、売却代金の95%に税率をかけて計算できます。

取得費と譲渡費用のほかにも差し引ける特別控除もあるのですが、これは次の所有期間5年以下に該当する物件の売却に関して説明します。

2:5年以下の短期保有物件は 所得税30%・復興特別所得税0.63%・住民税9%


取得日から売却日の属する年の1月1日までがもし5年以下と短いようですと、税負担があわせて39.63%と倍に増えることに気をつけてください。

所有期間が短い物件の税率を高くしているのは、不動産の値上がり益で儲けることに対して抑制するためで、持家以外の投資物件などにも適用されます。

ただし事業用や貸付用でない居住用物件であれば、短期と長期を問わず所得を最大3,000万円引き下げる特別控除の特例を受けることができます。

特例を受ける要件に関しての主な留意点は、下記のとおりです。

・親族に売却するものでは無い
・売却物件または新居で住宅ローン控除を受けていない・受ける予定がない

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで住まいを購入した際に、原則13年にわたり年末ローン残高の0.7%を所得税額から差し引くことができる控除です。

物件の売却代金が9,000万円、取得費2,500万円、譲渡費用500万円のケースで短期に該当する場合でも、特別控除3,000万円を差し引けば、税額は(9,000万円-2,500万円-500万円-3,000万円)×39.63%=1,188万9,000円となります。

所有期間5年超の長期に該当し特別控除3,000万円を差し引くのであれば、かける税率は20.315%ですので、このおよそ半額の609万4,500円に下がります。

3:所得税10%・復興特別所得税0.21%・住民税4%の軽減税率が適用されることも


長期保有の物件でも所有期間10年超などの要件を満たすと、20.315%より3分の2程度に下がる軽減税率が適用されることがあります。

具体的には、所得税10%・復興特別所得税0.21%・住民税4%の計14.21%に下がります。ただだし所得が6,000万円を超える部分には軽減税率が適用されず、20.315%となります。

軽減税率が適用される主な要件は

・取得日から売却日の属する年の1月1日まで所有期間・居住期間10年超
・親族に売却するものでは無い

物件の売却代金が9,000万円、取得費2,500万円、譲渡費用500万円のケースで上記および3,000万円特別控除の要件を満たした場合は、税額は(9,000万円-2,500万円-500万円-3,000万円)×14.21%=426万3,000円となります。

ただし例えば、売却代金-取得費-譲渡費用-3,000万円の差引所得が7,000万円と6,000万円を超えている場合は、6,000万円×14.21%+(7,000万円-6,000万円)×20.315%=1,055万7,500円と計算されます。

まとめ


不動産売却にかかる所得税などの税金は、売却代金そのものではなく、取得費(または売却代金の5%)と譲渡費用を差し引いた所得に税率をかけて計算します。この税率は20%となることが多いですが、所有期間等により変動する点にも注意してください。

そして居住用の不動産を売却するのであれば、所得は最大3,000万円減らせるので、取得費がきちんとわかっているのであれば税金がかからないことも多く、売主側が税金面で大きな心配をする必要はありません。

税金を払うことになった場合、サラリーマンや年金受給者に関しての住民税は給与や年金から差し引かれますが、一方で所得税と復興特別所得税に関しては、売却した年の翌年3月15日までに売主自身で納税が必要になります。

売った段階で試算額を提示する業者もありますが、100万円以上の多額の納税が見込まれる場合は、資金を事前に貯めておいた方がよいと売主にアドバイスすることも有効です。