「実家を解体して土地で売ろう」と考えて見積りを取ったら、思っていたより数十万円高かった——その原因がアスベストだった、というご相談があります。
2022年4月から、一定規模以上の解体・改修工事では、アスベストの事前調査結果を行政へ報告することが義務になりました。個人宅も対象です。この調査と、見つかった場合の除去費用が、解体費用を押し上げます。
この記事では、売る側が知っておくべきことに絞って、宅地建物取引士が解説します。「調べてから売るか」「そのまま売るか」の判断材料としてお読みください。
アスベストとは|なぜ今も問題になるのか
アスベスト(石綿)は、耐火性・断熱性に優れ安価だったため、1970年代から1990年代の建材に 広く使われていました。屋根材、外壁材、天井材、床材、配管の断熱材などです。
吸い込むと健康被害のおそれがあるため、2006年に原則使用禁止となりました。ただしそれ以前に建てられた家には、今も残っています。
つくば市で該当しやすい建物
研究学園都市の建設が本格化したのは1970年代です。当時から建っている住宅は、まさにアスベストが使われていた時期にあたります。
目安として2006年より前に建てられた家、特に1990年代以前の建物は、含有の可能性を前提に考えたほうがよいでしょう。ただし築年数だけでは断定できず、調査しなければわかりません。
★2022年4月から始まった報告義務
ここが最も重要な変更点です。大気汚染防止法にもとづき、解体・改修工事を行う施工業者は、アスベスト含有建材の有無を事前に調査し、その結果を都道府県等へ報告することが義務づけられました。厚生労働省が所管する石綿障害予防規則にもとづき、労働基準監督署にも報告する必要があります。
報告の対象になる工事

- 建築物の解体工事……解体作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上
- 建築物の改修工事……請負代金の合計額が100万円以上(税込)
- 工作物の解体・改修工事……請負代金の合計額が100万円以上(税込)
「個人宅のリフォームや解体工事なども含まれます」と環境省が明記しています。事業用の建物だけの話ではありません。
80㎡はどのくらいか
約24坪です。一般的な戸建て住宅は延床30〜40坪程度なので、ほとんどの住宅の解体が報告対象になります。「うちは小さいから関係ない」とは考えないほうがよいでしょう。
報告するのは施工業者
報告義務を負うのは工事を行う施工業者で、売主であるお客様が自分で手続きをするわけではありません。ただしその費用は工事代金に含まれます。ここが売主に跳ね返ってくる部分です。
出典:環境省「4月1日から石綿の事前調査結果の報告制度がスタートします」(2022年3月1日・厚生労働省同時発表)。報告は「石綿事前調査結果報告システム」から電子申請でき、1回の操作で都道府県等と労働基準監督署の両方へ報告できます。
逆に、床面積の合計が80㎡未満の解体工事や、増改築のみで解体を伴わない工事は報告義務の対象外となります。ただし対象外であっても、法律で定められた事前調査そのものが不要になるわけではない点に注意が必要です。調査対象となる範囲や報告の要否は工事内容によって細かく分かれるため、判断に迷う場合は解体業者や自治体の窓口へ事前に確認しておくと安心です。
売却にどう影響するのか
①解体費用が上がる
調査自体の費用に加え、アスベストが見つかれば除去費用が別途かかります。建材の種類(レベル1〜3)によって作業の厳重さが変わり、飛散しやすいものほど高額になります。
解体して更地にしてから売る予定だった方にとって、この差額がそのまま手取りの減少になります。
②工期が延びる
調査、報告、除去作業と工程が増えるため、解体完了までの期間が延びます。「相続税の納付期限までに現金化したい」といった事情がある場合、この遅れは無視できません。
③買主への告知が必要になる
アスベストの調査結果を把握している場合、その内容は買主へ説明すべき重要な事項にあたります。宅地建物取引業法では、建物についてアスベスト使用調査の記録があるときは、その内容を重要事項として説明することとされています。
知っていて伝えなかった場合、契約不適合責任を問われるおそれがあります。隠すことは選択肢になりません。
実務では、不動産売買契約の重要事項説明書にアスベスト調査結果の有無を記載する欄があり、調査記録があるのに記載を省くとトラブルの原因になります。建材の製造時期や繊維の使用状況までは買主も細かく確認しませんが、「調査したかどうか」「記録が残っているかどうか」は必ず聞かれる注意点です。購入を検討する側にとってはリスクの大きさに直結する情報のため、売買を急ぐあまり対策を後回しにせず、早い段階で不動産会社に相談しておくと安心です。
★アスベストがある家の3つの売り方
ここが本題です。調べてから売るか、そのまま売るか。正解は物件と事情によって変わります。

①現況のまま売る(建物付きで売却)
もっとも費用と手間がかからない方法です。建物を解体せずに売るなら、そもそも解体工事が発生しないため、調査も除去も不要です。
買主が解体するかリフォームするかを判断し、その費用を織り込んで価格が決まります。売主が先に費用を負担しなくて済むのが最大の利点です。
ただし建物の状態が悪い場合、買主が見つかりにくいという面はあります。
②調査してから売る
先に調査を行い、結果を開示したうえで売却します。
「アスベストは無かった」とわかれば、買主は安心して買えます。逆に「あった」場合も、除去費用の見積りを示せば、買主は総額を計算できます。不確実性が減るため、大幅な値引き交渉を受けにくくなるのが利点です。
調査費用は建材の数や採取箇所によりますが、数万円程度からが目安です。
③解体・除去してから売る(更地渡し)
除去工事を行い、更地にしてから売ります。買い手の裾野は広がりますが、費用が最も大きく、回収できるとは限りません。
さらに更地にすると住宅用地の特例が外れ、固定資産税が上がります。売却まで時間がかかると、その間の税負担が増えます。
くわしくは実家じまいの費用と手順|3000万円控除の落とし穴もご覧ください。
どれを選ぶべきか
実務では、①現況のまま売るを軸に考えることが多くなります。理由は単純で、売主が先に数十万円を出す必要がないからです。
ただし「早く確実に手放したい」「価格の下振れを避けたい」なら②、「土地として明確に売りたい」なら③という判断もあります。まず査定で、3パターンの手取り額を比べてみることをおすすめします。
買取という選択肢
アスベストの可能性がある古い家は、不動産会社による買取と相性がよいケースがあります。
調査も解体も不要で売れる
買取なら現況のまま引き渡せます。調査費用も除去費用も、売主が負担する必要がありません。解体後の処理は買主である不動産会社が判断します。
契約不適合責任を負わない形にできる
個人の買主に売る場合、後から問題が見つかると責任を問われる可能性があります。買取なら、契約不適合責任を免責とする取り決めが可能です。「売った後に何か言われないか」という不安がなくなります。
期間が読める
買主を探す期間が不要なため、最短2日での現金化も可能です。相続税の納付期限が迫っている場合などに有効です。
ただし買取価格は仲介で売れる相場より下がるのが通常です。「早さ・確実さ」と「金額」のどちらを優先するかで選んでください。
つくば市で特に注意したいケース
1970〜80年代の研究学園都市の住宅
研究学園都市の整備に合わせて建てられた住宅は、アスベストが使われていた時期と重なります。竹園・吾妻・松代・並木などの地区には、当時からの建物が今も残っています。
公務員宿舎跡地の周辺
跡地の再編が進むエリアでは、周辺の古い戸建てもまとめて世代交代の時期を迎えています。売却の相談が増える一方、築年数の古い建物が多くなります。
調整区域の古い農家住宅
谷田部・茎崎・筑波地区の農家住宅は、母屋のほかに納屋・倉庫・車庫などの附属建物があることが多く、それぞれに波形スレートなどが使われている場合があります。解体対象の床面積が増えるため、調査・除去の範囲も広がります。
店舗・工場・アパートを持っている場合
住宅以外の建物は、吹付け材が使われている可能性が住宅より高い傾向があります。除去の難度も費用も上がるため、早めの確認をおすすめします。
アスベスト事前調査の流れ|書面・現地・分析の3段階
売却や解体を進める前に、調査がどの段階で進むのかを知っておくと、不安が減り、解体業者の見積りも比べやすくなります。2023年10月からは、解体・改修工事の事前調査は、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者が行うことになっています。
段階1|書面調査(図面・建築確認書類)
設計図面、仕様書、建築確認の書類、リフォームの工事記録などから、使われた建材を確認します。図面が残っている家ほど調べやすく、屋根・外壁・断熱材の仕様が一目でわかることもあります。まずは手元の書類を探してみてください。
段階2|現地調査(屋根・外壁・天井・断熱材の確認)
書面で判断できない箇所は、調査者が現地で目視確認します。屋根、外壁、軒天、天井、床、配管まわり、煙突、断熱材など、建物の部分ごとにチェックしていく流れです。
段階3|分析調査(必要な場合のみ)
書面と現地の確認だけで判断できない建材は、サンプルを採取して分析機関で含有を調べます。分析を省いて「石綿を含むもの」とみなして扱う方法もありますが、その場合は除去や対策の費用が重めに見積もられる傾向があります。見積りがどちらの前提なのかは、必ず確認しましょう。
アスベストの種類とレベル区分|屋根・外壁・断熱材はどう違う?
アスベスト含有建材は、飛散のしやすさによって3つのレベルに分けて扱われます。
| 区分 | 主な建材の例 | 飛散のしやすさ | 戸建てでの可能性 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 吹付け石綿などの吹付け材 | 非常に高い | 住宅では少ないが、鉄骨造・店舗・工場の耐火被覆などで見られる |
| レベル2 | 保温材・断熱材・耐火被覆材(配管・煙突まわりなど) | 高い | 古い設備まわりにあることがある |
| レベル3 | スレート屋根材、外壁(サイディング)、ケイ酸カルシウム板、床材などの成形板 | 比較的低い | 戸建てで最も多い |
戸建て住宅で多いのは、レベル3の成形板です。固く成形されているため通常の使用で飛散する心配は小さいものの、割ったり砕いたりすると飛散するおそれがあります。そのため解体時は、湿らせて手作業で外すなど、飛散を防ぐ作業が求められます。製造・使用が原則禁止となった2006年より前の建物は、屋根や外壁にこうした建材が使われていないか、一度確認しておくと安心です。
売却前に確認したいチェックリスト
調査を依頼する前に、次の点を整理しておくと、不動産会社や解体業者との相談がスムーズです。
- 建築年と建築確認の書類(2006年より前かどうか)
- 設計図面・仕様書・設備の資料が残っているか
- リフォーム・増築・屋根の葺き替え・外壁の張り替えの履歴
- 屋根と外壁の材料(スレート、サイディングなど)
- 断熱材、煙突、配管まわり、倉庫・離れなど別棟の有無
- 過去に調査や除去をした記録があるか
わからない部分は無理に判断せず、「ここがわからない」という一覧にして不動産会社に伝えるのがコツです。相続した空き家など、建物の経緯がわからない場合も同じ進め方で問題ありません。
売買契約でのアスベストの扱い|重要事項説明と責任
売主に対して、売却のためだけにアスベスト調査を義務づける規定は、原則としてありません。一方で、調査結果の記録がある場合、宅地建物取引業者は重要事項説明でその内容を買主に説明する必要があります。
注意したいのは、知っていたのに伝えなかった場合です。契約不適合責任を免除する特約を付けていても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れることができません(民法572条)。損害賠償や契約解除に発展すると、手取りが大きく減るおそれがあります。
売買契約では、建物の状態、調査の有無、現況での引渡しの条件、責任の範囲を契約書に明記し、トラブルを避けるのが基本です。
費用と手取りの考え方|調査・除去・解体を比べる
調査や除去の費用は、建物の規模、建材の種類、箇所、作業条件によって変わるため、一律の金額を示すことはできません。判断のポイントは、「現況のまま売る」「調査してから売る」「解体して売る」の3つで、最終的な手取りを比べることです。
建物の解体費用が、譲渡所得の計算上、譲渡費用になる場合があります。ただし要件があるため、譲渡所得の住民税と計算方法や、マイホーム特例(3,000万円控除など)も合わせて確認し、税理士や税務署にご相談ください。
また、自治体によっては、アスベストの調査や除去に補助制度を設けているところがあります。多くの制度は工事の着手前に申請が必要なため、つくば市・茨城県の最新の公式案内を、契約前にご確認ください。
購入検討者の不安への伝え方と価格交渉
購入を検討する人は、「健康被害は大丈夫か」「解体時にどれだけ費用が追加でかかるか」という点に不安を感じます。調査結果、図面、屋根・外壁の材料などの情報を整理して開示すれば、不安が減り、交渉も進めやすくなります。
価格交渉では、解体費用の見込みを前提に、相場からの調整幅を話し合う形が一般的です。仲介で購入者を探す場合の流れは、不動産仲介の仕組みとレインズの解説も参考にしてください。調査や解体の手間をかけずに早く進めたい場合は、買取という選択肢もあります。
2026年時点の注意|制度は改正されやすい
アスベストに関する報告義務や調査者の要件は、近年も改正が続いています。2026年時点の最新の手続きについては、環境省・厚生労働省・茨城県の公式案内や、解体業者・不動産会社に必ず確認してください。エリアや建物の規模によって対応が変わることもあります。
よくある質問
Q. 築年数から、アスベストの有無はわかりますか?
断定はできません。2006年の使用禁止より前の建物は可能性がありますが、実際に使われているかは建材を採取して分析するか、設計図書で確認する必要があります。図面が残っていれば、そこから判断できることもあります。
Q. 調査は誰に頼めばよいですか?
建築物石綿含有建材調査者などの資格を持つ調査者が行います。解体業者や不動産会社が窓口となって手配するのが一般的です。当社でもご紹介できます。
Q. アスベストがあると、家は売れなくなりますか?
売れます。古い建物には一定の割合で含まれているもので、珍しいことではありません。問題になるのは「あること」ではなく「わからないまま進めること」です。事実を把握して開示すれば、価格に反映して取引できます。
Q. 除去費用はいくらかかりますか?
建材の種類・量・作業条件によって大きく変わるため、一律の目安を申し上げることはできません。飛散性の高い吹付け材は高額、成形板は比較的安価という傾向があります。実際の金額は、調査結果にもとづく見積りでご確認ください。
Q. 隠して売ったらどうなりますか?
おすすめしません。調査記録があるのに伝えなかった場合、契約不適合責任を問われ、損害賠償や契約解除に発展するおそれがあります。結果的に大きな損失になります。
Q. まず何をすればよいですか?
解体を前提にせず、まず査定を受けてください。「現況のまま売る」「調査してから売る」「解体して売る」の3パターンで手取りを比べれば、調査や解体にお金をかけるべきかどうかが具体的に判断できます。
Q. 売主に、売却前のアスベスト調査の義務はありますか?
売却そのものを理由にした調査の義務は、原則ありません。ただし、解体や一定規模の改修工事を行う場合は、施工業者に事前調査と報告の義務があります。調査結果の記録がある場合は、重要事項説明で買主に説明する必要があります。
Q. 屋根や外壁だけにアスベストが使われていることはありますか?
あります。スレート屋根材やサイディングなどの外壁材、軒天、断熱材の部分だけに含まれているケースは珍しくありません。建物の部分ごとに確認することが大切です。
Q. 調査や除去に補助金は使えますか?
自治体によって制度の有無や条件が異なります。多くの制度は工事の着手前の申請が条件となるため、つくば市や茨城県の公式案内を、契約や着工の前にご確認ください。
まとめ
- 2022年4月から、アスベストの事前調査結果の報告が義務化(大気汚染防止法・石綿障害予防規則)
- 対象は床面積80㎡以上の解体、請負100万円以上の改修など。個人宅も含まれる
- 80㎡=約24坪なので、一般的な戸建ての解体はほぼ対象
- 売却への影響は①解体費用が上がる②工期が延びる③買主への告知が必要の3つ
- 売り方は①現況のまま②調査してから③解体してからの3通り。売主の持ち出しが少ないのは①
- 更地にすると住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がる点にも注意
- 隠すのは最も危険。把握した情報は開示して、価格に反映させる
つくば市の古い家の売却はハウスドゥ つくば研究学園都市へ
「解体したら高くついた」となる前に、まず3パターンの手取りを比べてください。現況のまま売った場合、調査してから売った場合、解体して更地で売った場合——それぞれの金額をお出しします。
当社の買取なら、調査も解体もせず現況のままお引き取りできます。最短2日での現金化が可能で、契約不適合責任を負わない形でのお取引もご相談いただけます。調査が必要な場合は有資格の調査者をご紹介します。
査定・ご相談は無料です。築年数の古い物件、納屋や倉庫がある農家住宅もお任せください。
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※本記事は2026年8月時点の法令にもとづく一般的な解説です。調査の要否、除去の方法、費用は建物の状況により異なります。具体的な判断は有資格の調査者、解体業者、または所管の行政窓口へご確認ください。当社は調査・分析を行う機関ではありません。
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