茨城県内44市町村の中でも、稲敷市は人口減少と高齢化のスピードが特に速いエリアのひとつです。国勢調査のデータをたどると、平成7年(1995年)の51,652人から令和2年(2020年)の39,039人まで、25年でおよそ4分の1が減少しています。この記事では、稲敷市の人口・地価の長期推移を公的データから読み解き、不動産の売却や相続を考えるうえで押さえておきたいポイントを整理します。

稲敷市の人口推移|25年で4分の1が減少

茨城県統計課「市町村のデータ(稲敷市)」(総務省統計局「国勢調査」より)による人口推移は次のとおりです。

調査年人口(人)
昭和60年(1985年)44,454
平成2年(1990年)45,326
平成7年(1995年)※ピーク51,652
平成12年(2000年)51,284
平成17年(2005年)49,689
平成22年(2010年)46,895
平成27年(2015年)42,810
令和2年(2020年)39,039
稲敷市の人口推移グラフ|ハウスドゥ つくば研究学園都市
稲敷市の人口推移(国勢調査、出典:茨城県統計課)

平成7年の51,652人から令和2年の39,039人まで、25年間で12,613人・約24.4%の減少です。さらに直近の茨城県推計(茨城県統計課「茨城県常住人口調査」)では、令和8年4月1日現在の常住人口は35,212人・世帯数14,853世帯まで下がっており、国勢調査の令和2年時点からもさらに減少が続いていることがわかります。人口密度は171.1人/km²(令和8年4月1日現在)で、県南エリアの中でも低い水準です。

65歳以上が4割を超える高齢化率

年齢別人口割合(令和7年10月1日現在、茨城県統計課)を見ると、15歳未満7.2%・15〜64歳52.3%・65歳以上40.6%と、65歳以上が4割を超えています。これは牛久市(31.4%)やかすみがうら市(33.6%)と比べても高い水準で、茨城県南エリアの中では特に高齢化が進んでいる自治体のひとつといえます。出生数はわずか89人、死亡数は671人(いずれも令和6年、茨城県医療政策課)と、自然減の幅も大きく、人口減少のペースが今後も続く可能性が高いと考えられます。

公示地価の推移|42年間で3倍以上の下落

土地価格データサイト「土地代データ」(tochidai.info)によると、稲敷市の公示地価は42年間のデータで次のように推移しています。

公示地価平均(円/m²)備考
1995年34,78842年間のピーク
2024年11,32042年間の底値
稲敷市の公示地価42年推移|ハウスドゥ つくば研究学園都市
稲敷市 公示地価42年推移(出典:tochidai.info、目安)

出典:tochidai.info「稲敷市の土地価格相場・公示地価・基準地価マップ」。数値は目安としてご覧ください。ピークの1995年34,788円/m²から2024年の11,320円/m²まで、実に3.07倍もの下落幅です。前年比では-0.91%とまだ下落が続いており、阿見町や石岡市のような反発の兆しはまだ見られません。市内で最も地価が高い地点は稲敷市江戸崎(16,100円/m²)、最も低い地点は稲敷市早戸(5,940円/m²)で、同じ市内でもエリアによって2.7倍の差があります。

なぜ稲敷市の地価下落は続いているのか

稲敷市には鉄道駅がなく、最寄りの土浦駅・ひたち野うしく駅からもバスでの移動が必要です。TX(つくばエクスプレス)沿線の牛久市や、常磐線沿線の土浦市・石岡市と比べて公共交通の利便性で見劣りする分、地価の底打ちが遅れている可能性があります。一方で、圏央道稲敷インターチェンジがあり車移動の利便性は確保されているため、広い土地や倉庫・工場用地としての需要は一定数あります。

4つの旧町村が合併した稲敷市の成り立ち

稲敷市は2005年3月に江戸崎町・新利根町・桜川村・東町の4つの町村が合併して誕生しました。市の中心的な市街地は旧江戸崎町エリアにあり、市役所や商業施設が集まっています。合併から20年以上が経過した今も、旧町村ごとに集落の形成のされ方や土地利用の傾向に違いが見られます。

近隣市(土浦市・かすみがうら市)との人口減少率の比較

近隣のかすみがうら市の人口減少率(平成7年比・令和2年)は約11.5%であるのに対し、稲敷市は約24.4%と2倍以上のペースで減少しています。これは、稲敷市に鉄道駅がなく通勤・通学の利便性で見劣りすること、土浦市・つくば市への通勤圏としての結びつきがかすみがうら市より弱いことなどが背景にあると考えられます。同じ県南エリアでも、鉄道アクセスの有無が人口動態に大きく影響していることがうかがえます。

稲敷市江戸崎エリアと周辺エリアの地価差

市内で最も地価が高い稲敷市江戸崎(16,100円/m²)と、最も低い稲敷市早戸(5,940円/m²)の差は2.7倍です。江戸崎エリアは市役所・商業施設・江戸崎体育館などが集まる市の中心部であるのに対し、周辺エリアは農地や霞ヶ浦・北浦沿いの低地が多く、宅地としての需要に差が出ています。売却を検討する際は、市全体の平均値だけでなく、物件が属する具体的なエリアの相場を確認することが重要です。

産業構造と土地利用の特徴

産業別就業人口割合(令和2年国勢調査)は、第1次産業8.60%・第2次産業32.91%・第3次産業58.49%です。土地利用の状況(令和6年1月1日、茨城県市町村課)では農地46.0%・宅地7.5%・山林7.6%・その他38.9%となっており、農地の比率が茨城県内でも高い水準にあります。「その他」38.9%の大部分は霞ヶ浦・北浦に近い低地や調整池、河川敷などが含まれるとみられ、宅地化できる土地が限られていることも地価の伸び悩みの一因と考えられます。

年間商品販売額と製造品出荷額の推移

年間商品販売額(総務省統計局・経済産業省「経済センサス」等)は平成9年644億円→平成23年430億円まで落ち込んだ後、令和2年536億円まで持ち直しています。一方、製造品出荷額等(従業員4人以上)は平成12年1,113億円から令和5年1,681億円まで着実に増加しており(茨城県統計課「経済構造実態調査」等)、工業団地への企業立地が一定の下支えになっていることがうかがえます。

生活インフラの水準|水道普及率は県内でも低め

茨城県統計課のデータでは、稲敷市の水道普及率は74.0%(令和6年3月31日現在)、汚水処理人口普及率は80.4%(令和7年3月31日現在)です。これはかすみがうら市(水道97.6%・汚水処理94.6%)や阿見町・牛久市と比べてかなり低い水準で、市内でも井戸水や浄化槽に頼っている世帯が一定数残っていることを示しています。物件の売却を検討する際は、上下水道の整備状況が価格や買主の判断材料になるケースがあるため、事前の確認をおすすめします。医療施設従事医師数は人口10万人当たり90.3人(令和4年12月31日現在)で、こちらは県平均を上回る水準です。

財政力指数0.48の意味

財政力指数は0.48(令和6年度、茨城県統計課)で、県南エリアの中でも低めの水準です。1.0を下回るほど地方交付税への依存度が高いことを意味し、稲敷市の場合は人口減少・高齢化の進行と合わせて、今後の行政サービスの維持体制が課題になっていく可能性があります。

人口・地価の推移から見る、稲敷市で不動産を「売る」タイミング

稲敷市は、人口減少率・高齢化率ともに県南エリアの中で高い水準にあり、地価も42年間のデータで見ると下落が続いています。この状況は、相続や空き家の売却を考える際に次のような判断材料になります。

  • 地価の下落傾向がまだ続いているため、「今より下がる前に」という視点での早期売却の検討が現実的な選択肢になりうる
  • 65歳以上が4割を超える高齢化率の高さから、相続による空き家化が今後さらに増える可能性が高い
  • 上下水道の整備状況など生活インフラの差がエリアによってあるため、物件ごとの個別確認が重要

私たちハウスドゥ つくば研究学園都市店は、稲敷市を含む県南エリアで不動産の仲介・買取査定を行っています。トーマンが運営する地域密着の店舗として、人口減少エリアならではの「売れやすい物件・売れにくい物件」の傾向もふまえたご提案が可能です。相続した実家や空き家、農地付きの物件のご相談もお気軽にどうぞ。

よくある質問

Q1. 稲敷市の人口減少は今後も続きますか?

市の公式な将来推計人口の公表資料は今回確認できていませんが、出生数89人に対して死亡数671人(いずれも令和6年)と自然減の幅が大きく、平成7年をピークに30年近く減少が続いている実績を踏まえると、短期間で反転する材料は見当たりません。

Q2. 稲敷市の地価は今後どうなりますか?

直近(2024年)の前年比は-0.91%とまだ下落が続いており、阿見町や石岡市のような明確な底打ちの兆しは今回のデータでは確認できていません。今後の動向は継続的な確認が必要です。

Q3. 稲敷市の物件は上下水道が整っていますか?

市全体の水道普及率は74.0%(令和6年3月31日現在)、汚水処理人口普及率は80.4%(令和7年3月31日現在)です。エリアによって整備状況に差があるため、売却・購入を検討する際は個別の物件で確認することをおすすめします。

Q4. 稲敷市の4つの旧町村エリアで売却のしやすさは違いますか?

市の中心的な市街地は旧江戸崎町エリアにあり、商業施設や公共施設が集まっています。エリアによって利便性や需要の傾向が異なるため、一概にどこが売却しやすいとは言えません。個別の査定でご確認いただくのが確実です。

Q5. 稲敷市で相続した農地付きの実家はどうすればいいですか?

稲敷市は土地利用における農地の割合が46.0%(令和6年1月1日時点)と茨城県内でも高く、農地(地目が「田」「畑」)が含まれる相続不動産のご相談は珍しくありません。農地法の制限により宅地とは異なる手続きが必要になる場合があるため、まずは地目の確認から始めることをおすすめします。

Q6. 稲敷市で空き家が増えている理由は何ですか?

65歳以上人口の割合が40.6%(令和7年10月現在)と高く、県南エリアの中でも高齢化が進んでいることが背景にあります。人口減少と高齢化が同時に進むことで、相続後に活用されないまま空き家化するケースが増えやすい構造にあると考えられます。

まとめ

稲敷市は、25年間で人口が約4分の1減少し、65歳以上人口が4割を超えるなど、茨城県南エリアの中でも人口減少・高齢化のスピードが速い自治体です。公示地価も42年間で3倍以上下落し、直近もまだ下落基調が続いています。こうした構造的な変化を理解したうえで、早めの売却相談や資産の整理を検討することが、後悔のない選択につながります。ハウスドゥ つくば研究学園都市店では、稲敷市の実情をふまえたご相談を承っています。

稲敷市の不動産売却について、エリアごとの特徴をさらに詳しく知りたい方は稲敷市の不動産売却・買取・査定ページもあわせてご覧ください。市の暮らし全般については稲敷市の住みやすさガイド、近隣エリアの人口・地価動向はかすみがうら市の人口・地価の推移もご参考になります。

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