「実家の土地が道路に面していない」「隣の家の敷地を通らないと出入りできない」——つくば市の古くからの集落や、分割を繰り返した住宅地では実際にあるご相談です。
結論から言うと、こうした土地でも売れます。ただし通行の権利がどうなっているかを整理しておかないと、買主が住宅ローンを組めず取引が止まります。
この記事では、囲繞地通行権と通行地役権の違い、そして売却前に何を確認しておくべきかを、宅地建物取引士が解説します。
袋地とは|道路に接していない土地
他人の土地に囲まれて公道に出られない土地を袋地(ふくろち)、その周囲の土地を囲繞地(いにょうち)といいます。
なぜ問題になるのか
建築基準法では、建物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接している必要があります(接道義務)。これを満たさないと建て替えができません(再建築不可)。
そして通行権が不明確だと、買主は「本当に出入りできるのか」がわからないため購入をためらいます。金融機関も担保評価を下げます。
★通行権には2種類ある
ここが最も誤解されている点です。「囲繞地通行権」と「通行地役権」は別のもので、性質がまったく違います。

①囲繞地通行権(民法210条)
民法第210条はこう定めています。
他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
契約がなくても、法律上あたりまえに認められる権利です。隣地所有者の同意は要りません。
ただし制約があります。通行の場所や方法は「必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないもの」を選ばなければなりません(民法211条)。「自分に都合のよい経路を自由に選べる」わけではありません。
そして償金の支払いが必要です(民法212条)。通行によって生じた損害に対して支払います。通路の開設によって生じた損害以外は、一年ごとに支払うことができるとされています。
②通行地役権(民法280条)
こちらは当事者の契約によって設定する権利です。「この部分を通ってよい」という合意を結び、登記することができます。
囲繞地通行権と違い、袋地でなくても設定できます。「近道として使いたい」「水道管を通したい」といった場合にも使えます。
範囲や対価は契約で自由に決められ、無償とすることも可能です。
★分筆で袋地を作ったときは扱いが違う
ここが実務で最も重要で、かつ見落とされる論点です。
土地を分割した結果として袋地が生じた場合、民法第213条により通行できる相手が限定されます。
分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。

2つの重要な帰結
- 通れるのは「分割相手の土地」だけ。反対側にある無関係な他人の土地は、たとえそちらのほうが公道に近くても通行できません
- 償金の支払いは不要。自分たちの都合で袋地を作ったのだから、当事者間で処理すべきという考え方です
だから分筆の線の引き方が決定的に重要
「使っていない奥の土地だけ売ろう」と分筆すると、売る側の土地が袋地になり、通行先が自分の残地に限定されます。買主から見れば「売主の土地を通らせてもらう前提の物件」であり、価格は大きく下がります。
あわせて土地の一部だけ売りたい|分筆せず売る方法もあるもご覧ください。つくば市の165㎡ルールと合わせて、分筆前に確認すべき点をまとめています。
私道に面している場合の確認事項
つくば市の住宅地では、公道ではなく私道に面した土地が数多くあります。この場合、通行権とは別の確認が必要です。
①私道の持分があるか
私道が共有になっていて持分を持っていれば、通行に問題は生じにくいといえます。逆に持分がないと、通行や掘削で他の所有者の承諾が必要になります。
②掘削承諾があるか
これが最も見落とされます。水道管やガス管を新しく引き込むには、私道を掘る必要があります。私道所有者の掘削承諾書がないと工事ができません。
買主が建て替えを予定している場合、掘削承諾が取れるかどうかで購入判断が変わります。売却前に書面で取得しておくと、取引が格段にスムーズになります。
③位置指定道路かどうか
私道でも、建築基準法上の道路として指定されていれば接道義務を満たせます。くわしくは位置指定道路とは?売却で確認すべき持分と承諾をご覧ください。
通行権が不明確な土地を売るには
①覚書・承諾書を作成する
長年の慣行で通っているだけ、という状態はよくあります。この場合、隣地所有者と書面を交わしておくことが最も有効です。
「通行を認める」「掘削を承諾する」「所有者が変わっても引き継ぐ」——この3点を明記します。関係が良好なうちに取り交わしておくことが肝心です。相続で代替わりすると話がまとまりにくくなります。
覚書を交わす際は、無償で通行を認めるのか、それとも通行料のような形で毎月・毎年の負担を設定するのかも決めておくと、後々のトラブルを防げます。原則としては無償の慣行が多いものの、私道の補修費用などを案分する取り決めを盛り込む事例もあります。将来その土地を売買する場面になったとき、買主側が内容を確認しやすいよう、覚書は必ず書面で残しておいてください。
②通行地役権を設定して登記する
より確実にするなら、通行地役権を設定して登記します。登記があれば、隣地が第三者に売られても権利を主張しやすくなります。
費用と手間はかかりますが、土地の価値そのものが上がるため、結果的に回収できることがあります。
③そのままの状態で買取に出す
隣地所有者との交渉が難しい、相手が所在不明といった場合、現況のまま不動産会社に買い取ってもらう方法があります。
権利関係の整理を買主側が引き受けるため、売主が交渉の矢面に立たずに済みます。価格は下がりますが、動かない土地を持ち続けるよりは確実です。
つくば市で袋地・私道が多いエリア
谷田部・茎崎・筑波地区の旧集落
古くからの集落は、農道や里道を生活道路として使ってきた経緯があります。登記上の地目や所有者が現況と合っていないことも多く、「誰の土地を通っているのか」から確認が必要になります。
相続で細分化された住宅地
敷地を兄弟で分けた結果、奥側が袋地になっているケースです。前述の民法213条により、通行先が分割相手の土地に限定されます。
ミニ開発で作られた私道
数区画に分けて分譲された住宅地では、中央の私道を複数人で共有していることがあります。持分を持っているか、掘削承諾のルールがあるかを確認してください。
市街化調整区域の飛び地
調整区域では、そもそも建築ができない土地もあります。通行権以前に「建てられるのか」の確認が先になります。
売却前に自分でできる確認
①公図で形を見る
法務局で公図を取得すると、自分の土地がどの土地に囲まれているかがわかります。オンラインでも請求でき、数百円です。
公図は必ずしも現況と一致しませんが、「どの地番に接しているか」を把握するだけでも十分に役立ちます。
②登記事項証明書で地役権を確認する
通行地役権が設定されていれば、登記事項証明書に記載があります。権利部の乙区をご確認ください。
ここで注意していただきたいのは、自分の土地ではなく「通らせてもらっている隣の土地」の登記を見る必要がある点です。地役権は、通行される側(承役地)の登記簿に記録されます。
③昔の書類を探す
親や祖父母の代に取り交わした覚書や念書が残っていることがあります。権利証と一緒に保管されていることが多いので、一度ご確認ください。1枚の紙が土地の価値を大きく変えることがあります。
放置するとどうなるか
相続のたびに難しくなる
通行を認めてくれていた隣人が亡くなり、相続した子の代になると「そんな話は聞いていない」となる——これが最も多いトラブルです。口約束は世代を越えません。
隣地が売られると前提が変わる
隣地が第三者に売却されると、登記のない通行の合意は新しい所有者に主張しにくくなります。建物を建てられなくなり、資産価値が下がります。
結果として売れない土地になる
通行できない土地は、買い手が付かないまま固定資産税だけを払い続ける状態になります。管理不全空家等として市から指導を受ける対象にもなり得ます。
関係が良好なうちに、書面で整えておくこと。これが最も費用対効果の高い対策です。
よくある質問
Q. 隣の人が「通るな」と言ってきました
袋地であれば囲繞地通行権は法律上当然に認められるため、通行を全面的に禁じることはできません。ただし通行の場所や方法について争いになることはあります。まず話し合い、まとまらなければ弁護士にご相談ください。
Q. 車で通ることもできますか?
ケースによります。囲繞地通行権は「必要かつ損害が最も少ない方法」に限られるため、徒歩は認められても自動車の通行までは認められないことがあります。過去の裁判例でも判断が分かれています。
Q. 償金はいくら払えばよいですか?
法律に金額の定めはありません。通行によって相手が受ける損害に応じて決まります。実務では当事者の合意で定めることが多く、話がまとまらなければ裁判所の判断によります。
Q. 長年通っているので時効で権利になりませんか?
通行地役権の時効取得が認められる場合がありますが、「自ら通路を開設した」ことなど厳しい要件があります。単に通っていただけでは足りません。時効に期待せず、書面で権利を明確にすることをおすすめします。
Q. 袋地は住宅ローンが使えませんか?
金融機関により判断が異なります。接道義務を満たさず再建築不可の場合、住宅ローンが通りにくいのは事実です。買主が現金購入か、リフォームローンを使うケースが多くなります。
Q. 売る前に何を用意すればよいですか?
公図・登記事項証明書・測量図をご用意ください。これで土地の形状と接道状況の当たりがつきます。通行の実態については、現地を見せていただければ当社で整理します。
まとめ
- 道路に出られない土地(袋地)でも売却は可能。ただし通行権の整理が前提
- 囲繞地通行権(民法210条)は契約なしに当然発生するが、登記できず、償金の支払いが必要。経路は「損害が最も少ない方法」に限られる(211条・212条)
- 通行地役権(民法280条)は契約で設定し登記できる。範囲や対価は自由に決められる
- ★分割で袋地が生じた場合は、分割相手の土地しか通行できず、償金は不要(民法213条)
- 私道に面する場合は持分の有無・掘削承諾・位置指定道路かどうかを確認
- 不明確なまま売ると買主のローンが通らず取引が止まる。覚書や地役権の登記で先に整理しておく
つくば市の袋地・私道の土地はハウスドゥ つくば研究学園都市へ
「道路に接していない」「隣の土地を通らせてもらっている」——その状態のままご相談ください。公図と登記を確認し、通行権がどうなっているか、売却前に何を整えるべきかを整理してお伝えします。
隣地所有者との交渉が難しい場合や、相手が所在不明の場合も、当社の買取なら現況のままお引き取りできます。権利関係の整理は当社側で引き受けますので、売主様が矢面に立つ必要はありません。
査定・ご相談は無料です。再建築不可、市街化調整区域、旧集落の土地もお任せください。
お電話:0120-565-072(通話無料)
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※本記事は2026年8月時点の民法にもとづく一般的な解説です。通行権の有無や範囲は個別の事情により判断が分かれます。争いがある場合は弁護士へ、登記については司法書士・土地家屋調査士へご相談ください。
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