「町の役場のすぐ横に、防災のための”タワー”が建っている」と聞くと、少し意外に思う方もいるかもしれません。境町役場の西側には、2018年に完成した全国初の指定緊急避難場所「水害避難タワー」があります。役場本庁舎3階部分と連接し、最大約1,000人を収容できるこの施設は、境町がどれほど本気で水害と向き合ってきたかを物語る象徴です。境町での住まい選びや不動産の売却・購入を考えるとき、この町の防災の歴史と現在地を知っておくことは、価格や利便性と同じくらい大切な判断材料になります。

境町はなぜ「水害避難タワー」を作ったのか

境町は、日本最大の流域面積を誇る利根川に隣接しています。もし利根川の堤防が決壊するような大規模水害が発生した場合、町の面積の約90〜95%が浸水域に入ると想定されており、これは県内でも突出して高い数値です。町はこの現実を正面から受け止め、平成27年(2015年)9月の関東・東北豪雨災害で役場周辺の人口密集地が孤立化した教訓をもとに、逃げ遅れた住民の緊急避難先として水害避難タワーを整備しました。

タワーは利根川決壊時の最大浸水深(役場庁舎で約7.15m)にも耐えうる構造で、2階部分(地上約10m)には水没しない備蓄倉庫と予備電源を設置しています。ただし町自身が明記しているとおり、これは「あくまで逃げ遅れた場合の緊急な一時避難場所」であり、通常時の避難先は別に定められた広域避難所です。この位置づけを正しく理解しておくことが、境町で暮らすうえでの防災の第一歩といえます。

境町水害ハザードマップ「逃げどきマップ」でわかること

境町は平成29年(2017年)7月に国土交通省が公表した利根川・渡良瀬川・思川の浸水想定区域図(想定最大規模の降雨を想定)をもとに、B4冊子型の水害ハザードマップ「逃げどきマップ」を作成しています。令和6年(2024年)改訂版では、令和元年東日本台風の教訓を踏まえた「広域避難の考え方」の追加や、災害対策基本法改正に伴う避難情報の種類変更(避難勧告の廃止)への対応に加え、令和4年2月・令和5年10月に県が公表した町管理外の中小河川(宮戸川・向堀川・女沼川)の浸水想定区域図も反映されました。

逃げどきマップの5つの特徴

  • B4サイズと大きく、目次が「質問形式」でわかりやすい
  • 利根川・渡良瀬川氾濫時の被害想定(家屋流失の可能性がある地域・浸水継続時間・氾濫流の到達時間の目安)を掲載
  • 平成27年関東東北豪雨災害の教訓(内水氾濫による浸水地域・通行止め実績)を反映
  • 町の95%が浸水するという前提に立ち、町外への「広域避難」構想を掲載
  • 裏表紙に「我が家の広域避難タイムライン」を書き込める設計

マップは境地区・長田地区・猿島地区・森戸地区・静地区の5地区ごとに、避難のタイミングと避難先を分けて解説しているのも特徴です。境町での物件探しでは、自分が検討しているエリアがどの地区に属し、どのようなタイミングでの避難が想定されているかを、契約前に必ず確認しておくことをおすすめします。

境町 防災情報 早見表 ハウスドゥつくば研究学園都市

令和4〜5年に追加された中小河川の浸水想定区域

境町では利根川本流だけでなく、水防法第14条第2項第3号にもとづき、令和4年2月28日に「向堀川」、令和5年10月24日に「宮戸川」および「女沼川」の洪水浸水想定区域(想定最大規模)が茨城県知事によって新たに指定されました。台風や線状降水帯の影響で、これらの河川流域に24〜48時間で想定最大規模の降水量(向堀川885mm/48h、宮戸川676mm/24h、女沼川690mm/24h)があった場合、境地区・長田地区・静地区の一部が洪水浸水想定区域に含まれます。

町は「各河川単独での氾濫の可能性は低く、利根川の水位上昇に連動する可能性が高い」と説明しており、浸水想定区域は利根川の想定区域に包含される形で捉えるべきとしています。とはいえ、この指定が令和4年・令和5年という比較的最近のタイミングであることは、境町の水害リスクが継続的に見直されている証でもあります。中古住宅の購入を検討する際は、物件がこれらの河川流域に該当しないか、逃げどきマップと合わせて確認しましょう。

水位情報とタイムラインで「逃げ遅れゼロ」を目指す仕組み

境町は防災対策の第一人者である東京大学大学院特任教授・片田敏孝氏を防災アドバイザーに迎え、「広域避難プロジェクト事業」として関東・東北豪雨災害の検証、住民アンケートにもとづく広域避難シミュレーション、利根川タイムラインの妥当性検証などを実施してきました。この成果の一つが逃げどきマップであり、もう一つが「我が家のタイムライン」の作成推進です。

また、利根川の水位情報を避難の参考にできる仕組みや、新たな広域指定避難場所の指定、利根川氾濫時の水位電柱標示なども整備が進められています。境町は単独の自治体で完結させず、「利根川中流域4県境広域避難協議会」など近隣自治体・県境を越えた協議会を通じて「逃げ遅れゼロ」を目指す取り組みを継続している点も、この町の防災姿勢を理解するうえで重要なポイントです。

土砂災害・地震のリスクはどう考えればよいか

境町は関東平野の平坦な低地に位置しており、山地・丘陵地を抱える県北エリアのような急傾斜地の崩壊や土石流を想定した土砂災害警戒区域の指定は、境町公式ホームページ上では確認できませんでした(2026年8月時点)。これは地形上、境町が土砂災害よりも水害への備えを優先課題としてきた背景を裏づけるものといえます。より詳細な土砂災害・地震の揺れやすさに関する情報を確認したい場合は、国が提供する「ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)」で全国共通の指標を確認することもできます。断定的な表現は避け、「境町公式では確認できなかった」という事実をそのままお伝えします。

地震については、境町も緊急地震速報や全国瞬時警報システム(Jアラート)の全国一斉情報伝達訓練(年4回)に参加しているほか、防災行政無線・防災アプリ「サカインフォ」による情報伝達体制を整備しています。

境町の防災情報の入手先まとめ

境町では、水害・地震に関する情報をいくつかの手段で入手できます。日頃からどれか一つでも登録・確認しておくと、いざというときの初動が変わります。

防災アプリ「サカインフォ」

境町公式の防災アプリで、避難情報や防災行政無線の内容をスマートフォンで確認できます。防災行政無線が聞き取りにくい場合の補完手段として活用されています。

河川水位情報・通行止めマップ

利根川など主要河川の水位情報は、避難の判断材料として町から公開されています。あわせて、大雨時に冠水しやすい町道等の注意箇所も「通行止めマップ」で確認できます。

防災安全課(役場2階)

ハザードマップの内容や避難場所について具体的に相談したい場合は、境町役場2階の防災安全課(電話:0280-81-1307、交通防災係:0280-81-1308)に直接問い合わせることもできます。

境町の暮らしと不動産|水害リスクをどう受け止めるか

境町は令和8年7月1日現在で人口23,851人・世帯9,597世帯(境町公式ホームページ)。茨城県内で人口が増加している数少ない自治体(守谷市・阿見町・五霞町・境町の1市3町)の一つでもあり、圏央道 境古河ICへのアクセスの良さや自動運転バスの実証実験など、交通・利便性の面で注目を集めています。2026年公示地価は町全体平均22,942円/m²・坪75,844円(tochidai.info・国交省地価公示ベース、前年比-0.12%、目安)で、住宅地に限ると21,016円/m²・坪69,476円(-0.15%)です。

水害リスクがあるからといって、境町の住まいとしての価値が低いわけではありません。全国初の水害避難タワー、令和6年改訂の逃げどきマップ、令和4〜5年に追加指定された中小河川の浸水想定区域など、境町は「リスクを隠さず開示し、備えを継続的にアップデートする」という姿勢を一貫して取ってきました。不動産の購入・売却いずれの場面でも、こうした行政の取り組みを正しく理解し、対象物件の浸水想定区域該当有無を事前に確認することが、後悔しない住まい選びにつながります。

2020年8月28日に施行された宅地建物取引業法施行規則の改正により、不動産取引の重要事項説明では水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明が義務項目に追加されています。境町で物件を売買する際は、逃げどきマップを示しながら物件の位置を説明することが不動産会社に求められており、査定額の根拠についても宅建業法第34条の2第2項にもとづき明示する義務があります。

よくある質問

Q1. 境町の浸水想定区域はどこで確認できますか?

境町公式ホームページの「令和6年改訂版 逃げどきマップ(水害ハザードマップ)」ページからPDFをダウンロードできるほか、国のハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)でも確認できます。物件購入・売却時は不動産会社が重要事項説明でハザードマップを用いて説明する義務があります。

Q2. 水害避難タワーは誰でも避難できますか?

水害避難タワーは役場本庁舎西側にあり、逃げ遅れた場合等の緊急時に一時的に約200人(役場本庁舎3階と連接時は最大約1,000人)が収容できる施設です。ただし本来の避難先ではなく、あくまで緊急時の一時避難場所と位置づけられているため、危険が迫る前に安全な広域避難所へ早めに避難することが推奨されています。

Q3. 境町は土砂災害の心配がありますか?

境町公式ホームページ上では、県北エリアのような急傾斜地の崩壊・土石流を想定した土砂災害警戒区域の指定は2026年8月時点で確認できませんでした。境町は平坦な低地に位置するため、水害への備えが優先的に整備されてきた経緯があります。

Q4. 令和4〜5年に追加された浸水想定区域とは何ですか?

利根川本流だけでなく、町内を流れる向堀川(令和4年2月28日指定)、宮戸川・女沼川(令和5年10月24日指定)についても、茨城県知事により洪水浸水想定区域が新たに指定されました。境地区・長田地区・静地区の一部が該当します。

Q5. 中古住宅を購入する前に自分で確認できることはありますか?

境町公式ホームページの逃げどきマップや国のハザードマップポータルサイトで、検討している物件の所在地区が浸水想定区域に該当するかを事前に確認できます。あわせて、境町の避難所等のページで最寄りの広域避難先も確認しておくと安心です。

Q6. 境町の家を売却するときもハザードマップの説明は必要ですか?

はい。2020年8月28日施行の宅地建物取引業法施行規則改正により、不動産取引の重要事項説明では水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明が義務化されています。売却をお考えの方は、査定の根拠(宅建業法第34条の2第2項)とあわせて、こうした説明義務についても不動産会社に確認するとよいでしょう。

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まとめ

境町は利根川に隣接する立地ゆえに大規模水害のリスクを抱えていますが、全国初の水害避難タワー建設、令和6年改訂の逃げどきマップ、令和4〜5年の中小河川浸水想定区域の追加指定など、リスクと正面から向き合い、備えを継続的に更新してきた町でもあります。境町での住まい選びや売却をお考えの方は、こうした防災情報を踏まえたうえで、ハウスドゥ 家・不動産買取専門店 つくば研究学園都市へお気軽にご相談ください。

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