「実家をすぐに売る気はない。とりあえず持っておこう」——多くの方がそう考えます。
ただ、空き家は持っているだけでお金が出ていきます。しかも1年あたりの金額はそれほど大きく見えないため、気づかないうちに5年・10年と積み上がっているのが実情です。
この記事では、つくば市の税率と制度にもとづいて、空き家の維持費を項目ごとに整理します。そのうえで「持ち続ける」と「売る」のどちらが合理的かを判断する材料をお示しします。
維持費の内訳

①固定資産税・都市計画税
毎年1月1日時点の所有者に課税されます。誰も住んでいなくても、使っていなくてもかかります。
つくば市の税率は固定資産税1.4%です。都市計画税は0.15%で、制限税率0.3%の半分に抑えられています。課税対象は市街化区域全域と、市街化調整区域のうち下水道処理区域内の土地・家屋です。
なお課税標準額が土地30万円・家屋20万円未満なら免税点未満で課税されません。古い建物は評価額が下がっているため、建物だけ非課税というケースもあります。
②火災保険
ここが見落とされやすい項目です。空き家は多くの場合、住宅物件ではなく「一般物件」として扱われ、保険料が割高になります。
誰も住んでいないため放火や漏電の発見が遅れ、被害が大きくなりやすいと評価されるためです。年間保険料は1万円から6万円程度が目安とされますが、建物の状態や補償内容で大きく変わります。
「使っていないから」と解約するのは極めて危険です。失火して近隣へ延焼すれば、賠償が発生し得ます。空き家であることを保険会社に伝え、適切な契約に切り替えてください。
③電気・水道の基本料金
契約を残せば、使わなくても基本料金がかかります。ただし売却を予定しているなら、水道は残しておくほうがよい場面があります。理由は空き家の水道は止めるべき?売るなら止めない理由で解説しています。
④草刈り・剪定
放置すると近隣からの苦情につながります。年1〜2回の外注で、1回あたり1万〜3万円程度が目安です。庭木が多い、敷地が広いといった条件で上がります。
⑤往復の交通費と時間
金額に表れにくいのがこれです。県外にお住まいなら、往復の交通費に加えて丸1日が消えます。年に数回でも、負担は小さくありません。
★勧告を受けると固定資産税が最大6倍になる
維持費の話で最も大きなリスクがこれです。

いまは住宅用地の特例で軽減されている
建物が建っている土地には住宅用地の特例があり、課税標準額が軽減されています。
- 小規模住宅用地(200㎡以下の部分)……課税標準が6分の1
- 一般住宅用地(200㎡を超える部分)……課税標準が3分の1
勧告を受けると特例が外れる
管理が行き届かず、市から管理不全空家等・特定空家等として勧告を受けると、この特例が適用されなくなります。結果として土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。
「毎年8万円だった税金が、翌年から数十万円になる」——これが起こり得ます。維持費の話が、突然まったく違う規模になるのがこのリスクです。
いきなり勧告は来ない
安心していただきたいのは、勧告の前に「助言・指導」の段階があることです。この時点で草を刈る、破損を直すなどの対応をすれば、増税は避けられます。
市からの通知を放置しないでください。草木の繁茂、屋根や外壁の破損、ごみの放置などが判断の要因になります。
5年・10年で計算してみる
1年分だけ見ると「まあこのくらいなら」と思える金額でも、期間で見ると印象が変わります。
年間の合計を出してみる
お手元の納税通知書に書かれた固定資産税・都市計画税の実額に、火災保険料、光熱費の基本料金、草刈り費用、交通費を足してください。これがあなたの物件の年間コストです。
10年で考える
その金額に10を掛けます。「10年後に売る」という選択は、この金額を先に支払うのと同じ意味を持ちます。
さらに、建物は年々古くなり、10年後の売却価格は今より下がるのが通常です。維持費を払いながら、資産価値も目減りしていきます。
それでも持ち続けるべき場合はある
誤解のないように申し上げると、持ち続けることが正しい場合もあります。
- いずれご自身や子世代が住む予定がある
- 賃貸に出して収益を得られる見込みがある
- 周辺の開発計画があり、地価の上昇が見込める
- 相続税の申告期限との関係で、いま売ると不利になる
問題なのは「決めていないから、なんとなく持っている」状態です。理由があって持つのなら、それは判断です。
維持費を下げる方法
①火災保険を見直す
空き家であることを伝えたうえで、補償内容を必要な範囲に絞ると保険料を抑えられる場合があります。ただし解約は選択肢にしないでください。
空き家の保険は、無人であることを理由に補償が使えなかったり、逆に空き家向けの専用プランに切り替えることで保険料が下がったりするケースがあります。台風や雪害で屋根や外壁の修繕が必要になったときに補償対象かどうかも、この機会に確認しておくと安心です。地元の業者に定期的な見回りを依頼しておけば、雨漏りなどの小さな異常を早期に見つけられ、放置による近隣とのトラブルも防ぎやすくなります。
②使わない契約を止める
ガスは内見で使うことがほぼないため、止めてよい場合が多くあります。電気は内見時の照明・換気に必要なので残すことをおすすめします。
③賃貸に出す
維持費を賃料で賄う方法です。ただし入居前のリフォーム費用がかかり、入居者が付いた後は簡単に売却できなくなります。古い建物では、投資を回収できるか慎重な判断が必要です。
④解体して更地にする
これは逆効果になることが多い方法です。建物を壊すと住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税が上がります。売却の見込みが立ってから解体するのが原則です。
あわせてアスベスト調査は売却前に必要?解体費用への影響もご確認ください。
⑤売却する
維持費をゼロにする唯一の方法です。加えて、売却代金が手元に入ります。「使う予定がない」と決まっているなら、これが最も合理的です。
つくば市の事情
市街化区域か調整区域かで税負担が違う
都市計画税は市街化区域全域と、市街化調整区域のうち下水道処理区域内にかかります。調整区域の下水道処理区域外なら、都市計画税は課税されません。
ただし調整区域は買い手が限られるため、売却の難易度は上がります。維持費が安いからと放置すると、結果的に手放せなくなります。
研究学園都市エリアは資産価値が保たれやすい
TX沿線や研究学園地区は需要があるエリアです。建物が古くても土地に価値があるため、維持費を払い続けるより早めに売却したほうが有利なケースが多くあります。
旧集落・農村部は時間との勝負
谷田部・茎崎・筑波地区の旧集落では、時間が経つほど買い手が減ります。建物の傷みも進みます。維持費を払いながら価値が下がる状態が続くため、判断は早いほうが有利です。
維持費以外にかかる「見えない負担」
近隣への責任が続く
建物の一部が飛んで隣家を傷つけた、ブロック塀が倒れた、といった場合、所有者が責任を負う可能性があります。台風や地震のたびに心配が続くことになります。
特に注意が必要なのは、人が住まなくなった住宅は換気や通水が行われないため、他の家より劣化のスピードが速いという点です。所有者本人が劣化の進み具合に気づきにくいまま数年が経ち、台風が直撃したその際に倒壊に至る、というケースも実際にあります。修繕や解体には数十万円から数百万円かかることが多く、こうした対策を先送りにすると費用がかさむだけでなく近隣とのトラブルにもつながります。所有する土地の立地によっては行政からの是正勧告の対象にもなり得るため、注意しておきたいところです。
相続のたびに関係者が増える
兄弟2人で共有していた実家が、それぞれの子の代になると4人、孫の代で8人と増えていきます。人数が増えるほど、全員の合意を得ることが難しくなります。
実務では、祖父母の代の名義が残ったまま相続人が十数人になっている物件を見かけます。こうなると売却は極めて困難です。
判断できる人がいなくなる
所有者が認知症になると、成年後見人の選任と家庭裁判所の許可がなければ売却できません。手続きに半年から1年かかります。くわしくは認知症の親の家は売れる?成年後見と裁判所の許可をご覧ください。
「まだ元気だから」と先延ばしにすると、売りたくても売れない状態になります。
判断のしかた|3つの質問
質問1:5年以内に使う予定はありますか
ご自身や子世代が住む、事業に使うなど具体的な予定があるか。「いつか使うかも」は予定ではありません。
質問2:毎年の維持費を10年払い続けられますか
年間コストに10を掛けた金額を見て、それだけの価値がある資産かを考えてください。
質問3:管理を続けられますか
年に数回の通気・通水・草刈りを、この先10年続けられるか。ご自身の年齢や生活の変化も踏まえてご検討ください。
3つとも「はい」なら持ち続ける判断に合理性があります。1つでも「いいえ」があるなら、売却を検討する時期です。
空き家の管理を自分で行う場合とサービスに委託する場合
空き家の維持費を考えるとき、見落とされやすいのが「管理にかかる手間と時間」です。自分で通うのか、空き家管理サービスに委託するのかで、かかる費用も負担も大きく異なります。
自分で管理するときに行うこと
建物の傷みを防ぐために、最低でも月1回程度は次のような作業が必要です。
- 窓を開けての換気と、水道の通水(排水管の臭い・錆び水の防止)
- 郵便受けの確認とチラシの片付け(放置されていると空き家と見られやすくなります)
- 室内の雨漏り・カビ・害虫の確認、庭木や雑草の手入れ
お住まいが遠方の場合は、往復の交通費と丸一日の時間が毎回かかります。お金に換算しにくい負担ですが、これが続けられなくなったときに空き家の傷みが一気に進むのが典型的な原因です。
空き家管理サービスに委託する場合
民間の空き家管理サービスでは、巡回・換気・通水・郵便物の確認・写真付き報告などを代行します。費用はサービス内容や巡回の頻度、建物の大きさによって事業者ごとに異なるため、必ず複数社から見積もりを取り、作業内容を書面で説明してもらうようにしてください。
| 項目 | 自分で管理 | 管理サービスに委託 |
|---|---|---|
| 費用 | 交通費・消耗品(現金の支出は少ない) | 月額・年額の委託費用が別途かかる |
| 手間・時間 | 毎回の移動と作業が必要 | 報告を受け取るだけで済む |
| 見逃しのリスク | 素人判断になりやすい | 巡回の記録が残る |
| 向いている人 | 近くに住み、時間に余裕がある方 | 遠方・高齢・仕事で通えない方 |
委託費用は「年間の維持費」にそのまま加算して考える必要があります。たとえば年間の維持費が固定資産税や保険料だけで5万円を超えている場合、委託費用が加われば10年での負担はさらに膨らみます。「管理を続けるか、手放すか」を判断するときは、この合計額で比べてください。
空き家の維持費が高額になりやすいケース
同じ空き家でも、維持費の金額には大きな差が出ます。特に次のケースでは、想定より高額になりがちです。
マンションの空き家は管理費・修繕積立金が止まらない
分譲マンションの場合、住んでいなくても毎月の管理費と修繕積立金が発生します。固定資産税と合わせると、一戸建てよりも年間コストが重くなるケースがあります。大規模修繕の時期に一時金が求められることもあるため、管理組合の資料で今後の予定を確認しておくことが大切です。
屋根・外壁・雨漏りの修繕
人が住んでいない家は、傷みに気づくのが遅れます。小さな雨漏りを放置して屋根や柱まで傷んでしまうと、修繕費が一気に高額になります。「そのうち売るから直さない」と放置するほど、買い手がつきにくくなる原因にもなります。
庭木・シロアリ・設備の不具合
庭木が伸びて隣地にはみ出すと、近隣とのトラブルの原因になります。シロアリや給排水設備の不具合は、住んでいれば早く気づけますが、空き家では発見が遅れがちです。売却を考える段階で調査を行ったら、思わぬ修繕を指摘されたという相談も少なくありません。
築年数が古い物件の地盤や、アスベストの調査が必要になることもあります。詳しくはつくば市の地盤と改良費用、アスベスト調査は売却前に必要かの記事で整理しています。
空き家の処分方法を維持費の面から比べる
「処分」と一口にいっても、方法は複数あります。維持費の悩みを根本から解決できるのは、持ち主が変わる方法(売却・譲渡)だけです。
| 方法 | 維持費の負担 | ポイント |
|---|---|---|
| 売却 | 引き渡し後はなくなる | 現金化でき、税金や維持費の悩みから離れられる |
| 賃貸に出す | 残る(収入で相殺できる場合も) | リフォーム費用と空室リスクを見込む必要がある |
| 解体して更地にする | 建物分は減るが土地の税が上がることがある | 住宅用地の特例が外れるため、事前の確認が必須 |
| 無償での譲渡 | 引き取り手がいれば解消 | 引き取り手を見つけるのが難しい |
| 相続土地国庫帰属制度 | 承認されれば解消 | 建物がない土地が対象で、審査手数料と負担金が必要 |
相続した空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。主な要件は、昭和56年5月31日以前に建てられた家であること、売却代金が1億円以下であること、2027年12月31日までに売却することなどです。要件は細かく、耐震工事や解体を行う条件も付くため、必ず事前に税務署や税理士へ確認してください。生前贈与や相続の税金の考え方は生前贈与の7年加算の記事も参考になります。
売却は、維持費・税金・管理の手間をまとめて手放せる反面、タイミングを逃すと建物の価値が下がり、買い手がつきにくくなる点にも注意が必要です。
空き家の維持費に悩んだときの相談先の選び方
悩みの内容によって、相談する先は異なります。最初に窓口を間違えると、同じ説明を何度も繰り返すことになりがちです。
- 税金のこと:固定資産税は市の資産税課、譲渡所得や特例は税務署・税理士
- 空き家の補助金や制度:つくば市の空き家担当窓口(空家バンクの利用や補助金の条件など)
- 売却や買取の価格:地域の不動産会社。複数社の説明を聞き比べると安心です
- 管理の委託:複数の空き家管理サービスから見積もりを取り、内容を比べる
どこから手をつければよいか分からない場合は、まず納税通知書と登記の情報を手元に用意し、現状を整理するところから始めましょう。同じ地域の暮らしの情報はつくば市小野崎エリアの暮らしガイドでも紹介しています。
よくある質問
Q. 誰も住んでいないのに固定資産税がかかるのは納得できません
固定資産税は1月1日時点の所有者に対して、資産を持っていることに課税されます。使用の有無は問いません。減免は災害など限られた場合のみです。
Q. 名義が亡くなった親のままです。誰が払うのですか?
相続人が納税義務を承継します。代表者を決めて納付書が送られますが、相続人全員に義務があります。相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内の申請が必要です。
Q. 建物が古くて評価額がゼロに近いのですが
課税標準額が家屋20万円未満なら免税点未満で課税されません。ただし土地には引き続き課税されます。また建物があることで住宅用地の特例が効いているため、安易に解体すると土地の税額が上がります。
Q. 空き家バンクに登録すれば維持費は減りますか?
維持費そのものは変わりませんが、つくば市空家活用補助金の対象になり得ます。ただし空家バンクへの登録が前提で、3親等以内の親族間の売買では使えないなどの条件があります。
Q. まず何をすればよいですか?
納税通知書を用意して、年間コストを1枚の紙に書き出してください。そのうえで査定を受け、「10年分の維持費」と「今売った場合の手取り」を並べてみてください。判断がはっきりします。
Q. 空き家の管理を委託すると費用はいくらかかりますか?
管理サービスの費用は、巡回の頻度・作業内容・建物の広さによって事業者ごとに異なります。1社だけで決めず、複数社の見積もりを同じ条件で比べてください。年間の固定資産税や保険料と合算して、10年分の負担で判断するのが大切です。
Q. マンションの空き家でも維持費はかかりますか?
はい。毎月の管理費・修繕積立金と固定資産税がかかります。住んでいなくても請求は止まりません。滞納すると管理組合から請求を受けることがあるため、売却や賃貸などの方針を早めに決めることをお勧めします。
Q. 空き家の火災保険に加入していないとどうなりますか?
火災・風災・水災などの被害を受けても、自己負担で修繕や賠償を行うことになります。空き家は住宅用ではなく「一般物件」として加入が必要な場合が多く、補償の範囲や条件が異なります。契約内容は保険会社や代理店に確認してください。
まとめ
- 空き家は使っていなくても毎年お金が出ていく。固定資産税・火災保険・光熱費・草刈り・交通費
- つくば市の税率は固定資産税1.4%、都市計画税0.15%(制限税率0.3%の半分)
- 火災保険は空き家だと「一般物件」扱いで割高。それでも解約は危険
- ★勧告を受けると住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税が最大6倍。ただし勧告の前に助言・指導の段階がある
- 解体は逆効果になりやすい。特例が外れて税額が上がる
- 1年ではなく10年で計算する。同時に建物の価値は下がり続ける
- 持ち続けること自体は悪くない。問題は「決めていないから持っている」状態
つくば市の空き家のことはハウスドゥ つくば研究学園都市へ
「売るかどうか決めていない」段階でご相談ください。今売った場合の手取り額をお出しします。お手元の納税通知書と並べていただければ、持ち続ける場合と売る場合のどちらが有利か、数字で判断できます。
ご遠方で現地に行けない方には、当社が状況を確認してご報告します。傷みが進んだ物件、調整区域や旧集落の物件も、そのままの状態で買取が可能です。
査定・ご相談は無料です。売却を決めていなくても構いません。
お電話:0120-565-072(通話無料)
フォーム:無料相談・査定のお申し込みはこちら
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※本記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な解説です。記載の金額はすべて目安であり、当社の料金や保証額ではありません。税率・制度は変更される場合があります。固定資産税の実額は納税通知書、制度の詳細はつくば市役所へご確認ください。火災保険の契約条件は保険会社にご相談ください。
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